スペースを家具で仕切る

前回と前々回の記事では、スペースをガラスで仕切ることの効果について書きましたが、今回は家具で仕切るケースをご紹介したいと思います。
壁で仕切らずに家具で仕切ることの一番のメリットは壁の厚み十数センチ分のスペースを有効に使えるということ。

Tc School -クラーク 記念国際高等学校大阪天王寺- の多目的ルームではパイプ椅子や部活動で使う楽器などを収納する倉庫を設けるにあたり、メインのスペースとの間仕切りを目隠しと収納を兼ねた家具で行い、限られたスペースを有効に活用するよう計画しました。

スペースを家具で仕切る
 

倉庫の中の収納物が全く見えないように、高さ1850mmまでは背面パネルを付けていますが、最小限の広さの倉庫のため、内部の閉鎖感の緩和や防災、換気の観点から上部はオープンとしています。
用途上、音漏れ対策は必要ありませんので、こうすることで多目的ルーム側の視覚的な広がり効果も得ることができます。

間仕切り家具にはPBLなどのグループ学習を行う際に使用するスツールを多目的ルーム側から収納できるようにし、必要な時に学生が手軽に取り出せるようにしています。
また、上部には学生の作品を展示する場所を設け、発表会や学校説明会の際に紹介できるようにしました。

スペースを家具で仕切る
 

Uc School -クラーク 記念国際高等学校大阪梅田- では、学習スペースと動線部分を仕切るために家具を利用しました。
完全に分ける必要はなく、適度に視線をカットし、適度に視線が抜けるようにするために、家具は背面パネルを所々抜いたデザインとし、2つのスペースをゆるやかに分けています。

通路側にはゴミ箱を収納し、傘立てや自動販売機も家具により死角となる場所に置くことで、学習スペースがスッキリとした印象になります。
また、学習スペース側には本やパンフレット等が置けるようになっており、眺めると気分転換になり、空間を彩る効果の高い水槽はどちら側からもよく見えるように計画しました。

このように、家具で仕切ることにより、スペースをしっかりと仕切るのか、緩やかに仕切るのかといった仕切り方の程度も自由に調整することができ、スペースのゾーニングにバリエーションを持たせることも可能となります。


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個室の間仕切りにガラスを活用

前回に続いて、ガラスでスペースを仕切ることの効果について、今回は住宅の個室の間仕切りにガラスを用いたケースをご紹介します。

住宅の個室はある程度のプライバシーが求められるスペースのため、透過性のあるガラスを間仕切りに用いるケースはあまり多くありませんが、上手く用いることでプライバシーを確保しながら、スペースの狭さによって感じる圧迫感や閉塞感を解消することができます。

建物面積24坪の狭小住宅である Sa HAUS では、高齢のお施主さまの寝室を安全性や利便性を考慮して1階の居間の隣に設けたため、居間は7.4帖、寝室は4.8帖と共に決して広くはないスペース配分となりました。

個室の間仕切りにガラスを活用
 

写真正面の2室の間仕切りを兼ねたTVボードと2枚の扉(引き戸のため、写真ではTVボードの後ろに隠れています)の上の視点より高い部分をガラスとし、奥の個室の様子やそこで過ごす人の姿は見えずプライバシーを確保しながら、隣室の天井面が連続して見えることによって空間の広がりを感じられるようになっています。
天井と共に左側の壁際の吊り収納もつなげて設けることで、より空間の連続性が感じられるように計画しました。

前回ご紹介した Yh Hotel -星のリゾート奥入瀬渓流ホテル -の半露天付き客室のように、奥の空間が完全に見えるわけではありませんが、奥に存在するスペースを感じることでも、空間の広がりを感じることができます。

個室の間仕切りにガラスを活用
 

また、居間には吹き抜けの窓から1日を通して光が入るため、とても明るい空間となっていますが、ガラスの間仕切りによって、その光が隣の個室にも届くという効果もあります。

写真は個室内の様子で、扉を閉めた状態です。

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スペースをガラスで仕切る

スペースをガラスで仕切ることの主な目的は2つあります。
1つは直接外部からの光を取り込めないスペースに間接的に光を取り込むことで、もう1つは仕切られた向こう側が見えるようにすることです。

後者の「向こう側が見える」にも様々なパターンがあります。
代表的なのは向こう側の「活動」や「様子」が見えるというパターンで、音や場合によっては匂いなどを遮りたいけれども、中の様子が見えるようにしたい場合にガラスを間仕切りに使います。

スペースをガラスで仕切る-1
 

写真は Uc School -クラーク記念国際高等学校大阪梅田- のフリー学習スペースですが、正面の濃紺の壁の向こう側が職員室になっていて、中央に設けた窓を介して職員室から学習スペースにいる生徒の様子が窺える様になっています。
同時に、学習スペースからも職員室の様子が垣間見え、用事がある際に職員室に入りやすく、先生との距離を縮める効果があります。

スペースをガラスで仕切る-2
 

向こう側の「空間」が見えるというパターンもあります。
壁にすると閉鎖感や圧迫感が生じてしまうような場合に、ガラスで仕切ることで視覚的な広がりが得られます。

写真は Yh Hotel -星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル- の半露天付き客室です。
限られた間口の中で、客室の寛ぎスペースと半露天風呂それぞれの開放感と迫力のある眺めを確保するために、2つのスペースの間仕切りにガラスを使用しました。
向こう側の「空間」が見えることで、どちらのスペースも実際より広く感じることができ、向こう側の「空間」を介してワイドな景色を楽しむことができる様になっています。 

もちろん、浴室使用時には開放的すぎると落ち着かないというお客様も安心して泊まれるように、浴室側はロールスクリーンを下ろして視線をカットすることができるように計画しています。

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家を見渡すカウンターで落下防止

建物の上下をつなぐ階段や吹き抜け。
前回に続いて今回も本来の役割+αの機能を持った落下防止案をご紹介。

Ms HAUSでは、吹き抜けに面した手摺りの一部をカウンターデスクとしました。
通常は通行するためだけの廊下となる場所ですが、少しだけゆったりとスペースを確保して、子供達が勉強したり、皆が本を読んだりできるフリースペースとしています。
吹き抜けにカウンターを設置することで、カウンターに向いながら、下に居る家族とコミュニケーションを取ることができるのもおすすめのポイントです。

家を見渡すカウンターで落下防止
 

カウンターデスクは奥行きがあるため、一般的な手すりに比べて高さが低くても落下防止の機能を果たしてくれます。
事務所では手すりの高さは90cm前後とすることが多いですが、デスクは無理に高くはせず、通常の70cm程度で設定することができます。

Ms HAUSでは、鉛筆などのデスクの上の物が誤って下に落ちないように前にパネルを付けましたが、これが無くても人が落ちる心配はありません。
ただし、カウンターに上ったりすることは想定していませんので、お子さんがまだ小さいなどで心配な方は、お子さんが成長するまではネットを張るなどの対策が必要かもしれませんね。

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一石二鳥!収納で落下防止

建物の上下をつなぐ階段や吹き抜け。
人や空気が移動するスペースとしての役割はもちろんのこと、連続性や広がりを生み、変化のある空間をつくるための効果的な要素の1つにもなります。

ただし、その周りには誤って落ちることがないようにするための対策が必須です。
代表的な方法は壁を建てたり手すりを設置することですが、手すりを設置するにもコストが掛かる!ということで、今回は別の機能を兼ねた落下防止策をご紹介します。

一石二鳥!収納で落下防止
 

写真はFk Studio – Studio LUP- の2階の階段ホールに設置した落下防止を兼ねた収納です。

2階をヨガスタジオとして使用するため、どこかにヨガマットを収納する場所が必要でしたが、限られた面積の中で、奥行き60cmの収納棚を普通に設置すると、空間に多大な圧迫感を与えてしまいます。
そこで、収納の半分を階段の上部に張り出して設置することでスペースを有効に活用すると共に、落下防止の手すりも兼ねるように計画しました。

見せる収納で、ヨガグッズもインテリアアイテムの1つとなっています。

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最適な窓の大きさと取付高さ

窓が室内環境に与える影響はとても大きいです。
そのため、どこからどれだけの光を取り込み、どのように風のルートを確保するかを考えながら、部屋の大きさや用途、プランなどと合わせて大きさや配置を決めます。

同時に、外との関係をしっかりと捉えることも重要です。
窓によって外観の印象は大きく変わり、外側に何があるかによって室内から見える景色はもちろん、窓の効果もガラリと変わってしまいます。

最適な窓の大きさと取付高さ-1
 

例えば、窓の向こうに十分な広さの庭があったり、傾斜地等で見晴らしが良い場合、大きな窓を設置することで光や風、景色を存分に取り込んだ開放的な部屋にすることができます。

逆に、窓のすぐ外が人通りの多い道の場合、大きな窓を設置しても外からの視線が気になって、一日中カーテンを閉めっぱなしということにもなりかねません。
その結果、小さな窓を付けるよりも閉鎖的な部屋となってしまうこともあり得ます。

最適な窓の大きさと取付高さ-2
 

写真はGk HAUSのリビングです。

右には直接庭に出られるように大きな窓を設けながら、外側に目隠しの木塀を建てることで通行人の視線をカットしました。
その一方で、左のデスク前はハイサイド窓として、デスクに向かう時は外が見えずに集中することができ、少し引いたキッチンからは桜並木が見えるように計画しています。

最適な窓の大きさと取付高さ-3
 

この写真はSk HAUSのリビングです。

隣のマンションの斜面地に生える芝生を景色として取り込みながら、マンションから見下ろされる視線をカットするために、あえて低い位置に高さを抑えた窓を計画しました。
光は他の高い位置に設けた擦りガラスの窓から取り込みます。

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2段ベッドで仕切る子供部屋

子供部屋の数や広さ、兄弟姉妹何人で共有するかは様々な条件や考え方により、それぞれの家によって変わります。

例えばリビングを広く取って、家にいる時間のほとんどをそこで過ごし、子供部屋は最小限のプライベート空間があれば良いという場合、壁で区切られた小さな部屋を必要な数だけ作る方法ももちろんありますが、ある程度の広さの部屋を家具等で仕切るという方法もあります。

1つのスペースを兄弟それぞれの部屋や、子供部屋と書斎などに撤去や移動が容易な家具で分けることで、子供達の独立後などのライフスタイルの変化に柔軟に対応できます。

子供部屋の家具で代表的なものはベッド、デスク、本棚、あとはクローゼットと言ったところでしょうか。
この中でも特に広いスペースを占める上に、上部の空間が使えないベッドを2段に重ねて部屋を分ける間仕切り家具とすることで、空間を有効に使うことができます。

写真のNi HAUSでは兄弟の部屋を特注の2 段ベッドで仕切りました。

2段ベッドで仕切る子供部屋
 

スペースに合わせた家具をしつらえることで、既存の窓からでもバランスよく光や風を取り込め、仕切り具合を調整することもできます。
Ni HAUSではさらに既存の梁を利用して上段に本棚を設けることができました。

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