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個室の間仕切りにガラスを活用

前回に続いて、ガラスでスペースを仕切ることの効果について、今回は住宅の個室の間仕切りにガラスを用いたケースをご紹介します。

住宅の個室はある程度のプライバシーが求められるスペースのため、透過性のあるガラスを間仕切りに用いるケースはあまり多くありませんが、上手く用いることでプライバシーを確保しながら、スペースの狭さによって感じる圧迫感や閉塞感を解消することができます。

建物面積24坪の狭小住宅である Sa HAUS では、高齢のお施主さまの寝室を安全性や利便性を考慮して1階の居間の隣に設けたため、居間は7.4帖、寝室は4.8帖と共に決して広くはないスペース配分となりました。

個室の間仕切りにガラスを活用
 

写真正面の2室の間仕切りを兼ねたTVボードと2枚の扉(引き戸のため、写真ではTVボードの後ろに隠れています)の上の視点より高い部分をガラスとし、奥の個室の様子やそこで過ごす人の姿は見えずプライバシーを確保しながら、隣室の天井面が連続して見えることによって空間の広がりを感じられるようになっています。
天井と共に左側の壁際の吊り収納もつなげて設けることで、より空間の連続性が感じられるように計画しました。

前回ご紹介した Yh Hotel -星のリゾート奥入瀬渓流ホテル -の半露天付き客室のように、奥の空間が完全に見えるわけではありませんが、奥に存在するスペースを感じることでも、空間の広がりを感じることができます。

個室の間仕切りにガラスを活用
 

また、居間には吹き抜けの窓から1日を通して光が入るため、とても明るい空間となっていますが、ガラスの間仕切りによって、その光が隣の個室にも届くという効果もあります。

写真は個室内の様子で、扉を閉めた状態です。

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家を見渡すカウンターで落下防止

建物の上下をつなぐ階段や吹き抜け。
前回に続いて今回も本来の役割+αの機能を持った落下防止案をご紹介。

Ms HAUSでは、吹き抜けに面した手摺りの一部をカウンターデスクとしました。
通常は通行するためだけの廊下となる場所ですが、少しだけゆったりとスペースを確保して、子供達が勉強したり、皆が本を読んだりできるフリースペースとしています。
吹き抜けにカウンターを設置することで、カウンターに向いながら、下に居る家族とコミュニケーションを取ることができるのもおすすめのポイントです。

家を見渡すカウンターで落下防止
 

カウンターデスクは奥行きがあるため、一般的な手すりに比べて高さが低くても落下防止の機能を果たしてくれます。
事務所では手すりの高さは90cm前後とすることが多いですが、デスクは無理に高くはせず、通常の70cm程度で設定することができます。

Ms HAUSでは、鉛筆などのデスクの上の物が誤って下に落ちないように前にパネルを付けましたが、これが無くても人が落ちる心配はありません。
ただし、カウンターに上ったりすることは想定していませんので、お子さんがまだ小さいなどで心配な方は、お子さんが成長するまではネットを張るなどの対策が必要かもしれませんね。

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一石二鳥!収納で落下防止

建物の上下をつなぐ階段や吹き抜け。
人や空気が移動するスペースとしての役割はもちろんのこと、連続性や広がりを生み、変化のある空間をつくるための効果的な要素の1つにもなります。

ただし、その周りには誤って落ちることがないようにするための対策が必須です。
代表的な方法は壁を建てたり手すりを設置することですが、手すりを設置するにもコストが掛かる!ということで、今回は別の機能を兼ねた落下防止策をご紹介します。

一石二鳥!収納で落下防止
 

写真はFk Studio – Studio LUP- の2階の階段ホールに設置した落下防止を兼ねた収納です。

2階をヨガスタジオとして使用するため、どこかにヨガマットを収納する場所が必要でしたが、限られた面積の中で、奥行き60cmの収納棚を普通に設置すると、空間に多大な圧迫感を与えてしまいます。
そこで、収納の半分を階段の上部に張り出して設置することでスペースを有効に活用すると共に、落下防止の手すりも兼ねるように計画しました。

見せる収納で、ヨガグッズもインテリアアイテムの1つとなっています。

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最適な窓の大きさと取付高さ

窓が室内環境に与える影響はとても大きいです。
そのため、どこからどれだけの光を取り込み、どのように風のルートを確保するかを考えながら、部屋の大きさや用途、プランなどと合わせて大きさや配置を決めます。

同時に、外との関係をしっかりと捉えることも重要です。
窓によって外観の印象は大きく変わり、外側に何があるかによって室内から見える景色はもちろん、窓の効果もガラリと変わってしまいます。

最適な窓の大きさと取付高さ-1
 

例えば、窓の向こうに十分な広さの庭があったり、傾斜地等で見晴らしが良い場合、大きな窓を設置することで光や風、景色を存分に取り込んだ開放的な部屋にすることができます。

逆に、窓のすぐ外が人通りの多い道の場合、大きな窓を設置しても外からの視線が気になって、一日中カーテンを閉めっぱなしということにもなりかねません。
その結果、小さな窓を付けるよりも閉鎖的な部屋となってしまうこともあり得ます。

最適な窓の大きさと取付高さ-2
 

写真はGk HAUSのリビングです。

右には直接庭に出られるように大きな窓を設けながら、外側に目隠しの木塀を建てることで通行人の視線をカットしました。
その一方で、左のデスク前はハイサイド窓として、デスクに向かう時は外が見えずに集中することができ、少し引いたキッチンからは桜並木が見えるように計画しています。

最適な窓の大きさと取付高さ-3
 

この写真はSk HAUSのリビングです。

隣のマンションの斜面地に生える芝生を景色として取り込みながら、マンションから見下ろされる視線をカットするために、あえて低い位置に高さを抑えた窓を計画しました。
光は他の高い位置に設けた擦りガラスの窓から取り込みます。

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迎え入れてくれるポーチ

「ポーチ」って何だか分かりますか?

建築では、玄関やエントランスの外側にある庇が付いた空間を言います。
主な役割は扉を開けた時に建物の中に雨が吹き込むのを防いだり、傘をさしたり閉じたりする際に雨に濡れるのを防ぐことです。
他には、玄関扉に雨や直射日光が当たるのを防ぎ、劣化しにくくするという役割もあります。

迎え入れてくれるポーチ
 

Fk Studio -Studio LUP- ではスタジオという用途上、レッスンの前後に生徒さんが集中するため、一般的な住宅より広めのポーチを設けました。

また、庇と合わせて袖壁(※)を設けることで、より雨風や日射しを防いでくれるスペースとなるようにデザインしました。
訪れた人を迎え入れ、次の場所へ向かう人が準備を整えるための場所として包容力のある空間となっています。

ポーチの広さは敷地の大きさにも影響され、庇のサイズや形状は建物の外観や印象に大きな影響を及ぼすため、全体的に計画する必要がありますが、機能的には用途に合わせて十分広く、可能であれば奥行きを深く取るのがおすすめです。


※袖壁:「Studio LUP」のサインが付いている壁 です。

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作業効率の良いキッチン

ダイニングと一体となったキッチン。
そのレイアウトにも壁付型、ペニンシュラ型、アイランド型、さらにI型、L型、U型、2列型と様々なバリエーションがあります。

どのタイプがおすすめというのは無く、料理をする方の使い方や家の中でキッチンとして使えるスペース、空間全体との関係や見せ方などを考慮して決めます。

作業効率の良いキッチン
 

Ms HAUSのキッチンは油がはねるコンロを壁側にして掃除のしやすさに対応し、シンクをダイニング側にして家族と会話しながら作業ができるようにした2列型です。

2列型の中でもアイランド2列型とすることで、十分な作業スペースを確保しながら回遊できるキッチンを実現しました。
回遊できることで、子供達と一緒に料理をしてもぶつかったり狭い間を抜けて移動するストレスがありません。

さらに、上の写真でキッチンの左側には庭や駐車場につながる勝手口、右側には洗濯機のある脱衣室や玄関へつながる廊下があり、家事動線にも無駄がありません。

キッチン横デスク
 

廊下にはキッチンのすぐ側にワークデスクもあり、アイロン掛けやミシン掛けなどの家事の他、持ち帰った仕事なども料理の合間にできるようになっています。

奥がトイレと脱衣室で手前が玄関です。

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家の中の窓「ウチマド」

家の外壁には必ず窓があります。

窓は光を取り込んで風を通し、室内の環境を良くしてくれますが、壁で区切られた部屋に窓が1つしかないと、なかなか部屋全体に風を通して空気を入れ替えるのは難しくなります。
また、窓の外に十分な空間があれば良いですが、隣の建物が迫っている場合は光も入りにくくなります。

そんな時、部屋と部屋を仕切る間仕切り壁にも窓を付けることで、家全体に風を通したり、日射しの良く入る隣の部屋から間接的に光を取り入れることが可能となります。

私はこの室内の窓を「ウチマド」と読んで、積極的に設計に取り入れるようにしています。

家の中の窓「ウチマド」
  

写真は、Sa HAUSの2階、吹き抜けを挟んだ2つの個室に向かい合うように設けたウチマドです。
和紙の代わりに破れにくい不透明のアクリル板を用いた障子を入れ、閉めていても光が透過するように計画しました。

夜に個室の照明を付けると漏れるほのかな灯りも良い雰囲気です。

音は漏れやすくなりますが、その点が気にならない方には、家族の気配も伝わり住環境も良くなるのでおすすめです。

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